実家からリンゴが1箱送られてきたので、近所に配って回る。都心部では、こうした「おすそわけ」をする人が少なくなってきているかもしれません。
しかし、このおすそわけの精神は、仕事でも大いに役立ちます。この場合、おすそわけするのは「モノ」ではなく、あなたの「能力」と考えてください。
1. 仕事力アップの「おすそわけの法則」
能力のおすそわけというと、能力が群を抜いたレベルにないといけないと思うかもしれませんが、そうではありません。あなたがパソコンの操作に詳しくて、ソフトの設定に悩んでいる同僚や上司にやり方を教えてあげるのも、おすそわけです。
つまり、プロのレベルには全然達していないけれど、初心者に比べれば能力が高いと思えるようなことがあれば、それがあなたの強みであり、おすそわけの対象になり得る能力なのです。
ここで質問です。 あなたのおすそわけできることを明確にするヒントになるかもしれません。
最近、どんなことで人から感謝されましたか?
2. 見返りを求めないから、いい話が舞い込んでくる
おすそわけは、何かを与えるけれど見返りを求めません。こうした無償のやり取りが、人間関係を円滑にして、結果的にビジネスを成功に導くのです。
例えば、ブログをやっている人が、「とてもためになるブログなので、私のブログからリンクさせてもらってもいいですか?」と言うのと、「自分もリンクするのであなたもリンクしてください」と言うのでは、相手に与える印象がかなり違ってきます。
おすそわけでも「リンゴをあげるから、代わりに何かください」とは言いませんよね。ギブアンドテイクを強調しすぎると、せっかく与えているのに強欲な印象を相手に持たれかねません。
おすそわけの精神にあふれている人のもとには、いい話が集まってきます。おすそわけをもらった人が、「機会があったら、いつか何かをお返ししたいな」と無意識に感じているからかもしれません。結果的には、ギブ・アンド・テイクと似ているかもしれませんが、そこには大きな違いがあります。
それは「お返し」が自発的に行われる点です。
ギブ・アンド・テイクだと「お返し」が義務的になり、「これくらい返しておけばいいだろう」といったドライな関係になりがちです。おすそわけの場合、「お返し」は自発的で、この人のために何が役に立てることはないか」と発想するようになります。
3. 「いいこと貯金」を始めよう
何かいいことをすると、そこにお金が貯まっていく「心の貯金箱」がある、と想像してみてください。ただし、いいことの見返りをもらうと、お金は貯まらずプラスマイナスゼロ。例えば、何か仕事をしてお金をいただくのでは、貯金箱にお金は貯まりません。
自分がいいことをしたにもかかわらず、相手が何もしてくれなかった。プレゼントをあげたのに「ありがとう」の言葉もない。。。
そんなときはツイているのです。なぜなら、心の貯金箱にお金が貯まっていくから。そんなふうに考えると、どんな嫌なことが起きても何だかうれしくなります。
たぶん誰かがお金が貯まっていく様子を見ていてくれて、「そろそろ、いいことを起こしてあげようかな」といった感覚で、実際にいいことを起こしてくれているのかもしれません。
これが、おすそわけをするようになって強く感じていることです。
おすそわけの法則は、心理学的には「返報性の原理」と重なる部分があるかもしれません。誰かから何かをプレゼントされたり、親切にしてもらったりすると、お返しをしないといけないという感情がわきやすくなる習性が人には備わっています。これが「返報性の原理」です。
おすそわけを積み重ねているといいことが起きやすいのは、周りの人たちが知らず知らずのうちに「あの人(あの会社)を応援しよう」という気になっていくからかもしれません。
ただし、「返報性の原理」は、ビジネス上では小さな貸しで大きな見返りを得るための販売や交渉のテクニックとしてとらえられることが多く、そうした使い方は「おすそわけの法則」とは似て非なるものです。
あくまでもおすそわけですから、見返りは求めません。「ミカンをたくさんもらったからおすそわけをしよう」という人と、「お返しが欲しいから、お隣にミカンをあげよう」という人がいたら、どちらの人と付き合いたいですか?
見返りを目当てにした時点でおすそわけとは言えませんし、「心の貯金箱」に相手からの感謝の気持ちは貯まりません。見返りを求めず与えることを積み重ねて、心の貯金箱に感謝があふれていった結果、「いいこと」がやってくるのです。
周りの人(職場、顧客、取引先・友人・家族)からの感謝の累計が大きければ、それが信頼につながり、ビジネスでも大きな力になることは間違いありません。
あなたがおすそわけできることは何ですか?