ぼくは中学校や高校で「魔法の質問」の授業をしています。
質問の授業をすることは事前に生徒たちに知らされていますが、最初は「今から何が始まるんだろう?」「変な授業が始まったな」といった雰囲気が教室中に漂っています。
ところが授業の冒頭で、その日のテーマ「なりたい自分になる魔法の質問」を発表し、次に「この授業が終わったとき、どんな状態になっていたら最高?」と質問すると、教室のムードが一変します。
「人に質問するのが上手になっている」「自分が将来やりたいことが見えてきた」・・・。みんなが思い思いに、授業が終わったあとの「なりたい自分」を想像します。
1. 学校で生徒がやる気になる質問
人間は「目標の動物」です。「なりたい自分」という理想を思い描くと、それに向かって進み始めたくなります。その結果、生徒さんの心の中で変化が起こります。
「ちゃんと話を聞こうと思った」
「質問が何に役立つのか知りたくなった」
たった1つの質問を投げかけるだけで、授業に対するモチベーションは大きく上がります。生徒の「やらされ感」は薄れ、「何かをつかみ取る」ための自発的な授業に変わっていくのです。
これは学校の話ですが、職場でも全く同じです。
「終わったとき、どんな状態になっていたら最高?」に続けて使ってみてほしいのが、この2つの質問です。
・そのためにあなたができることは何?
・いつまでに、何に、どんなふうに取り組みたい?
ゴールが見えたあとには、ゴールにたどり着くための方法を考えなければなりません。この質問で、「いつまでに」「何に」「どんなふうに取り組むのか」を具体化できます。
2. 尋問は誰のためにもならない
会話例
上司「来週の新製品の説明会、準備にぬかりはないかな?もしうまくいかないとしたら何が原因になると思う?」
部下「少し心配なのは、パンフレットの到着が間に合わず、新製品の良さがきちんと伝わらないこと、ですかね」
上司「じゃあ、どうやったらうまくいくと思う?」
部下「印刷会社に納期の確認をして念を押すことと、万が一に備えて、会社のカラープリンターで出力する手配をしておくことです」
上司「じゃあ明日、私からも印刷会社に一報を入れておくよ」
部下が問題に直面して悩んでいるとき、上司が陥りがちなのは、「なぜできないんだ?」「どうしてこうなってしまったんだ?」と尋問してしまうことです。
このような責任追及のための尋問は、本当に不毛で何も生み出しません。部下は、せっかくの能力を「言い訳」のために動員してしまいます。できない理由はいくらでも探すことができるでしょう。でも、組織として一番大切なことは、目の前の問題を解決することです。
こうしたときこそ、上司は冷静になって、部下が問題にしっかり向き合えるようにサポートしてあげなければなりません。
失敗の弁明を求める習慣から脱し、部下が自ら課題を発見し解決できるように導くことが、この質問の目的です。
課題を解決するには、2つの考え方があります。1つh、従来の延長線上で物事を考えること。もう1つは全く異なる方法を採用することです。
例えば、自動車部品の製造でコストを削減する場合、2%なら従来の延長線上でコストを切り詰めれば達成できますが、2割となるとそうはいきません。部品の材質を金属からプラスチックに変えたり、3つの部品から構成されていたユニットを一体化して、一気に成形できるようにしたりと、抜本的に製造方法を見直す必要があります。
問題解決に臨むとき、実現が不可能と思えるレベルまで目標数値を大きく引き上げて設定し、解決策を考えてみると、新しいアイデアが生まれやすくなります。
どのようにしたらうまくいくと思う?
3. 「頑張ります」の中身を具体化する
ところで、「どうすればうまくいくと思う?」という質問に、相手が「とにかく頑張ります!」と答えてくる場合があります。そのときには、「じゃあ具体的に言うと、どのように頑張るの?」と問いかけます。
具体的な行動につなげることが、質問の最も重要な目的ですので、本人の考えを引き出してあげてください。
何かアクションを起こす前、あるいはアクションを起こしている最中に、この質問でリスクをあぶり出しておきます。
うまくいかないとしたら、何が原因だと思う?
強い組織は、メンバーが自分たちで問題を発見し解決することを自発的に何度も繰り返し、さらに強くなっていきます。
しかし、そもそも問題が何であるかを発見できなければ、その先の改善もありません。この質問を習慣づけることで、問題や課題に気づく力を養うことができます。
答えは、チーム全員で考えて、シェアしておきましょう。