しつもんを使うときには、「誰が、どんな状態で伝えるか」がとても重要になります。
よくある例で紹介しましょう。

1. 「急に聞かれても・・・」と部下は戸惑うもの
ある企業の研修に行ったときのことです。
そのときの受講者は管理職の方々でした。いつものようにしつもんの効果をお伝えし、「部下の成長につながるしつもんのしかた」を学んでいただきました。
参加者の皆さんには大変喜んでいただいて、「しつもんに効果があることがわかった。これからはしつもんを活用していく」と言っていただきました。
そして実際に、次の日から部下に向かってどんどんしつもんをしていったそうです。
ところが反応はいまいち。その人が期待していたような答えは得られなかったのです。
そして後日、「全然効かないじゃないか!」とクレームがありました。
これは、本当によくあるケースです。
でも、ここで部下の立場になって、少し考えていただきたいと思います。
おそらくこの上司の方は、これまで仕事を円滑に進めるために、どちらかというと指示を繰り返してきたのではないかと思います。
部下からしたら、「自分たちのことをわかってくれない」「こちらの都合の構わず、一方的に意見を押しつけられる」「従わないと怒られる」、こんなふうに思っていたかもしれません。
それなのに、たった1日研修に参加し、戻ってきたと思ったら、急に「じゃあ、君はどうしたらいいと思う?」なんて聞かれても、面食らうばかり。
その問いかけが部下の心に響くことはないでしょう。
2. 理想の答えを求めていないか?

上司によく見られる傾向として、「問いかける前に、返ってくる答えを期待している」ということが挙げられます。
たとえば、「この書類、明日までにできる?」と問いかけるときは、「はい、できます」という答えを期待してしまいがちです。そこで、「今日は無理です」という答えが返ってきたら、「なんでできないの?」と憤ることがあるかもしれません。
また、「どのようにすれば、期限に間に合うかな?」と問いかけるとき、「スケジュール管理をする」「段取りを組む」「進歩状況を共有する」など、上司目線での答えを期待している場合があります。
すると、部下から違う答えが返ってきたときに、「違う違う、これをするのが先だろ!」と思わず指示してしまうのです。
こんなふうに、最初から答えを期待している問いかけはうまくいきません。
実は、しつもんの効果を上げるのに、最も邪魔になるのがこの「期待」です。
期待が外れると、怒りや悲しみが生まれてしまいます。
期待は、手放したほうが、しつもんの効果も上がり、人間関係もうまくいくのです。
3. 自分自身にしつもんしてみよう

「期待を手放すこと」と同時に大切なのが、「しつもんの効果を信じること」です。どんなにいいしつもんをしたとしても、疑心暗鬼のままでは、結局うまくはいかないのです。
そのことを理解していただくために、まずは上司のあなたがしつもんの効果を体感してください。それは、自分自身にしつもんする、ということです。
自分にしつもんすると、自分なりの答えが出てきます。この感覚に触れると、「しつもんで出ない答えはない」ということを信じられるようになるのです。
すると、部下から出てくる答えがどのようなものでも信じることができるのです。
自分自身に対するしつもんがうまくいかないと、いくら部下に使ってもうまくいきません。これは「自分でできないことは、人にもできない」という、すべてのことに当てはまる原理です。
実際に、しつもんによって、今まで気付くことができなかった答えが自分の中から引き出されるのを体感すると、相手の中にも考える力があること、相手の中に答えが眠っていることを初めて信じられるようになるのです。
5. 問いかけることで初めて見えてくる

まずは、次のしつもんを自分自身にしてみましょう。
これらは、部下にしつもんを使う前に、ぜひ体験してもらいたいしつもんです。
・あなたの理想の上司はどんな上司ですか?
・なぜ、その人が理想の上司だと思うのですか?
・その要素をあなたに取り入れ、実践するとしたら何ができますか?
・それに向けて、今日からできる小さな一歩は何ですか?
いかがでしょうか?
おそらく、今までとは違った視点で考えることができたのではないかと思います。
「今まで曖昧だったものが明確になった」「自分の理想像がわかった」「今すべきことが見えてきた」と思われた方もいるかもしれません。
どれも、しつもんから生み出されたあなたの答えです。あなたがこのしつもんと答えの効果を信じられるようになると、部下に対するしつもんの効果も出てくるようになります。
akaz says
・あなたの理想の上司はどんな上司ですか?
まずは話を聞いてもらえる上司
・なぜ、その人が理想の上司だと思うのですか?
困ったときや相談したいときに話をしやすいから
・その要素をあなたに取り入れ、実践するとしたら何ができますか?
まずは相手の話を聞く
・それに向けて、今日からできる小さな一歩は何ですか?
肯定や否定や正解となる答えを求めない
期待を手放す