あなたにとって、お客様は誰ですか?
こう聞かれて、答えられない人はいないと思います。でも、ちょっと待ってください。お客様のとらえ方もいろいろあります。

1. 仕事力アップの「ありがとうの法則」
ある人は特定の顧客を思い描いているかもしれないし、ある人はもっと大きなくくりで考えているかもしれません。1つの質問には、さまざまな答えがある。
それがおもしろいところなのです。複数の答えを考えてみることで、気づきが生まれてくるのです。
仮にお客様の定義を「その商品・サービスを最も利用してほしい人」としましょう。その場合でも、既存の顧客の中に「最も利用してほしい人」がいるとは限りません。
「最も利用してほしい人」の多くが、あなたの会社の商品やサービスをまだ使っていないかもしれないからです。その場合、顧客をいくら分析したところで、新たなニーズは浮かび上がってきませんし、そこから得たデータで組み立てた戦略、戦術では、現状の売り上げを維持するのが精いっぱいでしょう。
お客様は、どのように24時間を過ごしていますか?
2. バス停は近いのに乗り方がわからない

北海道帯広市に十勝バスという会社があります。地方ローカルのバス路線はどこも赤字が常識化していて、十勝バスも利用客減少に頭を痛めていました。
ぼくは、自分の代わりに魔法の質問を広めてくれる認定講師を育成しています。札幌にも、中小企業診断士で、さまざまな会社で社員研修の講師を務め、しつもん経営の導入にも熱心な清水祥行さんがいます。彼の勉強会に十勝バスの社長さんも参加していました。
この勉強会で、「お客様は誰?」というワークを行いました。ここにその質問を並べてみます。
- Q. お客様はどんな方ですか?
- Q. お客様の趣味は何ですか?
- Q. お客様の家族構成は?
- Q. お客様は、休みの日には何をしていますか?
- Q. お客様はどんなものから情報を得ていますか?
- Q. お客様がお金を払ってでも解決したいことは何ですか?
- Q. お客様が気になるキーワードは何ですか?
- Q. お客様は買うときに、何をもとにして決断していますか?
これらの質問に、自信を持ってすべて答えられる人は、意外に少ないかもしれません。十勝バスの社長さんも、この質問の答えを紙に書きました。それを見て、清水さんは一言。
「社長、 これってお客さんのことじゃなくて、ご自身のことを書いたんじゃないですか」
社長さんは、空欄のままにするのも良くないと思い、答えが思い浮かばない欄には、自分の趣味や情報源を書いてしまったというのです。
「自分はお客さんのことを知っているつもりでいたが、実は全然知らなかった」
社長さんはこれらの質問から大きな気づきを得たのです。
ここからがこの社長さんのすごいところです。もっとお客様のことを知るために、お客様の家を訪問して、話を聞いてみようと考えました。しかも、重点的に話を聞くのは、バス停の近くに住んでいるのに、バスを利用していない人たち。
ここに、本当は自分たちを必要としているのに、きちんとサービスを提供できていない「真のお客様」がいると考えたのです。
手始めに、社長さんは管理部門の10人の社員と一緒に、主要路線の停留所周辺にある住宅100軒を訪ねて、「なぜバスを利用しないのか」を聞いて回りました。
その結果、驚くべきことが判明しました。
「なぜバスを利用しないのですか?」という質問に、高齢の方ばかりでなく多くの方が、「乗り方がわからないから」と答えたのです。
「そんなことがあるのだろうか」と思いますが、確かに電車やタクシーに比べると、バスの利用方法は複雑かもしれません。
前乗りか後ろ乗りか、料金はいつ払うのか、目的地までの料金はいくらか、降りるときはどうするか、乗り換え方法は、バス停と目的地の位置関係がよくわからない・・・。
若い人ならインターネットで調べたり、電話したり、友人に聞いたりして自分で解決できますが、高齢の方は簡単に調べられない。普段バスを利用しない人にとって、バスは利用するのが難しい乗り物になっていたのです。
そこで十勝バスでは、職員が停留所周辺の家に、バスの乗り方を説明して回ったそうです。さらに、停留所の案内表示をわかりやすくしたり、銀行、斎場、役所など目的地別に行き方を説明したチラシを作成して配布したりと、普段バスを利用しない住民を意識して情報発信を強化したところ、路線バスの類用客数は約40年ぶりに前年を上回りました。
客数が前年を上回るということは、地方ローカルのバス路線では非常に画期的なことで、ニュース番組にも取り上げられました。
こうした取り組みのスタートになったのが、「お客様は誰?」という質問でした。そして、サービスを使っていない人に着目して、その理由を直接尋ねて、できるところから改善していったことが、客数アップに結びついたのです。
お客様があなたの商品を使わない理由は何ですか?

上記の魔法の質問に答えてみる