「あなたの会社がなくなったら、誰が、どう困りますか?」
セミナーでこの質問を投げかけると、最初は誰もがびっくりします。普段考えもしないことを聞かれると、脳が戸惑ってしまうのでしょう。あなたが担当しているお客様の顔を思い浮かべて、ある日、あなたの会社が突然なくなってしまったら、そのお客様はどう困るのかを想像してみましょう。

1. 仕事力アップのゴリヤクの法則
この質問に答えることで、あなたの会社や提供する商品・サービスの存在意義、強みなどが明確になってきます。
「事業の目的は顧客の創造である」というのはドラッカーの言葉です。簡単に言うと、「ビジネスの目的は、より多くのお客様に、やり深く役立つことだ」という意味です。
売り上げや利益というのは、顧客へのお役立ち、つまり「価値の創造」を長期に渡って継続するための必要条件だと思ってください。
仕事というのは、提供している商品やサービスを利用していただいている人たちの喜びの「総和」と「深さ」、そして「累計」を大きくしていくことなのです。
仕事というのは本来、
①自分たちの商品やサービスを提供する
↓
②提供した商品やサービスが、お客様のお役に立つ
↓
③お客様が喜んだ対価として、代金を払ってくれる
という順に進むものです。
ところが実際には、①(商品やサービスの提供)と③(代金の支払い)がほぼ同時に行われ、②(商品やサービスがお役に立つ)があとになるのが一般的です。
このため、売り手の意識は販売段階で途切れがちで、最も重要な目的である②が、まるで手段のようになっているケースが多く見受けられます。
「お客様へのお役立ち」の部分こそ競争力の源泉であり、ここを磨いていくことで他社にはない「独自の売り」を築くことができます。このお役立ちのころを、ぼくは「ゴリヤク」と呼んでいます。
では、ゴリヤクについて少し考えてみましょう。
2. 寿司屋さんは寿司を届けているのではない

僕の実家は寿司屋です。家業が忙しいときは手伝っていました。寿司屋が1年で最も忙しいのは大みそかなのですが、実はこの日はぼくの誕生日でもあるのです。
でも、子どものころから誕生日は全然構ってもらえなくて、学生のときから、クリスマスも年末年始も仕込みや出前の手伝いをしていました。
さすがに大学生になるとクリスマスは遊びたいと思うようになり、モチベーションはかなりダウンしますが、我慢して手伝っていました。
出前に行って、「毎度どうも」と言って、お客様の家の玄関に入ってお寿司を置くと、その家の子どもたちがやってきて、「あっ、お寿司だっ!おいしそう」と叫ぶ。続いて、お母さんやお父さんが出てきて「おいしそうだね」と言ってくれる。その家庭がいい雰囲気になって、全員が笑顔になる。
その笑顔を見て、あるときハッと気がつきました。
「ぼくが出前をしているのはお寿司じゃなくて、お客様の笑顔だったんだ」
寿司屋は、お米にマグロを乗せたものではなく、笑顔をつくって届けているんだ。そんなふうに考えると何だか嬉しくなってきて、家業を手伝うのもちょっといいかなと思うようになったのです。
ぼくはコーチングのコーチという仕事もしています。コーチングを提供することが目的ではなく、その人がやりたいと思っていることを実現して、その人が幸せになることが目的です。
お寿司も同じです。頼んでくれる人は、お寿司を食べて、家族やお客様が喜ぶと思って注文してくれる。つまり、「笑顔になる」「楽しい気持ちになる」というのが、お寿司のゴリヤクです。
3. 顧客にゴリヤクを伝えよう

ぼくは質問家として仕事をしていく中で、自分のゴリヤクが何かを伝えることを意識しています。質問家とはどんなことをする職業なのか一般には知られていないので、特に意識しているのですが、もっとメジャーな仕事でも、「この人と仕事をすると(この商品を買うと)こんなふうになるんだ」ということをしっかり伝えることができれば、商談やプロジェクトがもっとスムーズに進むはずです。
テレビ通販で有名なジャパネットたかたが成功したのは、家電製品にあまり詳しくない中高年の購買層に向けて、1つの商品に時間をかけて使い方や楽しみ方をわかりやすく説明したことに加えて、使ったらどんな楽しい気持ちになれるかをじっくり伝えたことにあります。
「あのデジタルカメラやビデオカメラで、孫の決定的瞬間を収めて、家族みんなで見たら楽しいだろうな」と視聴者が思うような演出で、心をぐっとつかんだのです。単に機能だけをわかりやすく伝えても、視聴者の心は動かないでしょう。
ぼくはコーチとして独立した時期に、この点で失敗した苦い経験があります。宣伝のためにリーフレットをつくったのですが、コーチングとは何かといった説明や料金設定などの情報ばかり載せてしまったため、反響は全くありませんでした。失敗の原因は、ぼくのコーチングを受けたらどうなるのかというゴリヤクについて説明がなかったことです。
お客様は、どんな気持ちになりたくて、それを購入するのですか?
あなたはどんなゴリヤクを提供していますか?

上記の魔法の質問に答えてみる