トム・ハンクス、ミランダ・カー、サラ・ジェシカ・パーカー、安室奈美恵、
石原さとみ、榮倉奈々、菅田将暉なども撮影してきた、バルセロナ在住の写真家JO MORIYAMAさん。
表情を十何年も研究し、写真を撮る時だけじゃなく、その後の暮らしでも活きた表情で過ごしてほしいと、『日常こそ人生』と伝え、ポートレート撮影では表情のレクチャーまでされています。
世界の有名人との撮影秘話、相手の気持ちを想像し、表情を創造する秘訣を伺いました。
JO MORIYAMA
(ジョウ モリヤマ)
写真家 / 表情の専門家
http://www.jo-moriyama.com/
1. 受動的から能動的へシフトするまで
マツダミヒロ(以下、ミヒロ):今の活動と2,3年前の活動、両方とも写真を撮るということは変わりないと思うのですが、どんな変化がありましたか?
JO MORIYAMAさん(以下、JOさん) : 経済的な変化として、より安定しました(笑)
ミヒロ:それは単純に仕事が増えたということですか?
JOさん:いや、仕事が増えたと言うよりは、基本的には受注されて初めて成り立つ仕事なので、自分からビジネスの網を張るというスタイルが初めてだったから、それプラス、今までの受注仕事になったから、経済的には安定したかなということがあります。
今月はこれだけで、先月はこれしかなかった、ということが15年間ずっとあり続けましたから。
ミヒロ:えー! 15年間は、来月や再来月はどうなるか分からない感じだったんですか?
JOさん:来月は決まっているけれど、再来月は決まってない・・・という
ミヒロ:えー!本当に!
JOさん:そうそう。それはそうですよ。
ミヒロ:そうなんだ・・・カメラマンって、大体そんな感じなんですか?
JOさん:ぼくの周りは売れている人ばかりですけど、日本でいちばん売れている人で、半年先まで埋まってる、というような感じです。
それは10本指に入るくらいの人だから。
ミヒロ:能動的な仕事の受注と、受動的な受注があって、どちらかというと所謂 受動的な受注が業界のスタンダードという感じなんですか?
JOさん:受動的な受注がスタンダードですね。
ミヒロ:そこから自分で企画したり、自分で商品を作ったりとかは、考え方のシフトが必要だと思うのですが、それは戸惑ったりしましたか?
JOさん:いろいろと戸惑いました(笑)
よくある話ですが、「失敗したな」と思ったことが続き、成功につながったと確実に言えることがありました。
恥ずかしいようなこともたくさんしましたね。能動的な網を張るというところに辿り着くまで誰も教えてくれないし、誰もやっていないから。
15年間やってきて、少し自分の中で飽きがきていて、「どうせこうなるでしょう」と、やる前から結果が見えちゃうということがあり・・・
ぼくはファッションとポートレートの2本でやっていて、たまにビューティーをやっていましたが、7割がファッション、3割がポートレート。ファッションは「こうやっておいたらいいでしょ」ということで終わる・・・
特にフィルムからデジタルに移行してからは、ぼくから見たらですが「とりあえず誰でもいいよね」というようなスタンスに感じられたんです。それに嫌気がさしまして・・・
ときめかなくなっちゃったというか。
ポートレートに関しては、一発本番で後戻りできない。
与えられた時間の中で、どれだけその人と親密になって表情を引き出していこうかという、上辺だけじゃない、本当に人が求めているものをその時間で触れていくという作業が面白くて。
それだけは飽きがなく、常に感動が隠れているし、その感動に出会えるか、出会えないかは自分次第ということもありますし、写真がうまくいかなかったら大体カメラマンの責任だから、出会えるか出会えないかのシンクロ率というのもありまして、、、
その延長線に能動的なビジネスプランをつくっていって、一般人を撮るようになってから、みんなの反応に感動して「これだ!これだ!」と思いました。
ミヒロ:具体的には、どのような内容のサービスなんですか?
JOさん:具体的には、その人(そのお客さん)が本来持ち合わせているものを引き出す作業をしながら、素敵な表情を撮っていくということなんですけど・・・
本来持ち合わせているものって、人が社会で揉まれていく中で、成功していっても、成功していかなくてもだと思うんですけど、肩書きが付いていって、経験も付いてきて、それなりのプライドが付いてきて、たとえば「会社の部長にやっとなれました」となった時に、「おれは部長だから!」という、人間対人間というところよりも「部長」が先に来ちゃっているから、その「部長」というものや、芸能人だったら「わたし芸能人だから!」という「芸能人」を、一回剥がしていくという作業が、本来持ち合わせているものに近づけるということなんですね。
それは一貫してずっとやってます。
ミヒロ:へぇ〜。 ただ写真を撮るだけじゃなくて、レクチャーやセミナーがあって、その後に写真を撮るということをやっているんですか?
JOさん:そうです。
ミヒロ:そのレクチャーの時に伝えていることは、大まかにでいいのですがどんなことを伝えているんですか?
JOさん:表情ってどういうもので、人ってどういう表情をしているのか、ということを、口元と目元と脳の構造をふまえて話している感じです。
ミヒロ:それをみんなが聞いたときの反応は、どういう反応なんですか?
JOさん:一応「質問はありますか?」と聞くんです。あと、自分のテンションにムラがあって(笑)、調子が良い時は「こういう人いますよね」と、自分がその人を演じて説明する時があり・・・
「俺ってすごいカッコいいから、赤いフェラーリに乗ってどうのこうの・・・」って、こういう人いますよね?と見せて、そういう人の殻をまず破るんですよ、という説明をする時もあれば、淡々と説明する時もある。
ここはぼくが直したいと思っているところでもあるのですが。
ミヒロ:それは、結構みんな知らないことだと思うんですよね。
JOさん:そうですね。
ミヒロ:表情って一般の人はそんなにフォーカスしないので。
でも、その表情と素質だったり、表情と考え方がこんなにつながっているんだと知った時、どんな反応なのかな?と思いまして。
JOさん:「言われてみればそうかもしれないなぁ」というような反応だと思います。
2. 写真を撮る時だけじゃなく、その後の暮らしでも活きていく
ミヒロ:そのレクチャーがあってから撮るのと、いきなり撮るのは違うんでしょ?
JOさん:そうですね。
これは最近思ったことなんですけど、実際プロの現場では、レクチャーなしで撮るわけじゃないですか。相手もプロですが、写真を撮られるプロではないですから、モデルは別にしても。
たとえば、作家さんで15分時間があったとして、その15分で撮るという時に、セミナーはしないで、その方向にカメラマンのぼくが持っていく・・・ということを結果的にしているので、セミナーがいるか、いらないかと言ったら、「何でぼくがこうしているか?」を知るために説明しているだけなんです。
ということに、今気づきました。
ミヒロ:なるほど。
でも、ぼくは食べ物の味は変わると思っていて、ただ食べるのと、これを作った人が出てきて「これはね、何でこうやって作っているかというと・・・」とレクチャーがあって食べるのとでは、味が変わると思うんです。
そういう意味では、撮られる方も、いきなり撮られるよりも、そのレクチャーがあった方が緊張する、しないということではなくて、より自分を出せるような気がします。
JOさん:良かったー! じゃあ、話し続けよう!!!(笑)
ミヒロさんを撮った時も、レクチャーはなかったわけじゃないですか。
ミヒロ:いやいや、その時はなかったですが、その前にJOさんに会っていて、JOさんの考え方とか、撮り方というか、表情のことを聞いていたから、というのはありますよ。
JOさん:その時はセミナーで話すような内容はしなかった気がします(笑)
でも、説明した方が「なぜ、ぼくはそういうことをしているのか」を理解できると思いますね。
芸能人の人やモデルの人は、レクチャーを聞いていないので「でた!JO節!」と言って終わるんです。 多分、そこまで気づいていないと思います。
ミヒロ:ぼくはそれは新しいと思っていて。
ただ写真を撮る人はたくさんいるんですが
「表情のことを十何年も研究しています」、
「そのことをレクチャーします」、
「写真を撮る時だけじゃなく、その後の暮らしでも活きていきます」
JOさん:そうです!!! それ! それ!それが言いたい(笑)
写真だけいい顔していても意味がない!
ミヒロ:うんうん、本当そうですよね。
それをやっている人は他にいませんよね。
JOさん:あ、良かったー(笑) 上辺だけなのが嫌なんです!
ミヒロ:なるほど。
これを言うと語弊があるかもしれませんが、『プロフィール写真』という上辺を綺麗に撮っておけば「まぁいいか」と思う人って結構いそうな気がしていて、その人のいちばん良い瞬間だけを切り撮って、写真を撮って、それを使い、出回っていれば、それがその人のイメージになっちゃうじゃないですか。
でも実際に会ってみると「あれ?写真と違うな」みたいな。
そのように撮ってしまっている、使ってしまっている人たちもいて、
でも「上辺だけじゃ嫌なんだよね」と言うのは、何でそう思うんですか?
JOさん:日常生活が我々の人生のほとんどなのに、自分がどういう顔をしているか知らないで暮らしているって、写真の前だけで良い顔をしていても誤差が生じてしまう・・・
ミヒロ:そうそう、生じてしまう。
JOさん:実際人に会った時に「ん???ん?なに???」みたいな感じになるということを・・・知っていながら言わないのは、いちばん良くないな、と。
ミヒロ:あぁ(笑) なるほど。
素朴な疑問なんですが、SNSに自分をアップしますといった時に、自撮りで綺麗に撮る気持ちはとてもよく分かるんですが、とても綺麗に撮って写すということは、実際に会うと差異が生じるということを、JOさん的カメラマン視点から言うと、どのように捉えているんですか?
JOさん:全然OKなんですが、写真はいちばん良い瞬間を切り抜いているわけじゃないですか。こうやって喋っている時に、そのいちばん素敵な瞬間がいつでも出せるような状態が見え隠れしていればいいだけの話だと思います。
ミヒロ:なるほどね。
JOさん:普段、いつもしかめっ面で話している人が「あれ?SNSの素敵な表情はいつ出てくるのかな?」って思われながらその時間を過ごすのは・・・・・・ということなんです。
ミヒロ:なるほどね(笑)だとしたら、ぼく的なアプローチで言うと、
いつもの自分がいます、いい写真があります、といった時に、
「この写真の人物はどんな魅力があるんだろう?」にまず答え、
今、鏡を見て
「今の自分はどんな魅力があるんだろう?」に答え、
2つを見比べた時に
「どんな差があるんだろう?」を答え、
「その差を埋めるためには、今日どんな風に過ごそうか?」
というしつもんに答えてもらうといいと思います。
JOさん:そうですね。
生活に作用すると言うか、自分の普段の表情だったり、写真で写る表情が、生活の中で常に見え隠れしている状態を意識して暮らす。
ミヒロ:そうですよね。
▼インタビューは後半はこちら
『人の本来持ち合わせているものを引き出す』ことがカメラマン JO MORIYAMAさんインタビュー(2)
JO MORIYAMAさんも登壇予定!
しつもんカンファレンス
2019年11月9日(土)10日(日)
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