『マウイのハレアカラの山にサンセットと星を見る体験をする』ガイドを続けて15年。
続けるコツ、そこから見出した楽しさという貢献、人間の小ささと輝き、人とのつながり、チャレンジすることと成功を恐れる考え方、パートナーシップ。
自然という生物と向き合い続けてきた山内さんの言葉には、人としての尊厳を思い出させる力があります。それは長い時間、自分と対峙し続けて生まれた言葉なのかもしれません。
シンプルに、自然に生きる!
迷ったとき、自分の道を選択したいとき、思考をリセットしたいときなどにオススメな山内良和さんのインタビューです!
山内 良和
CPR免許救急救命士・
The Planetary Society (TPS)
アメリカ天文惑星協会会員
天体専門ガイド
1. 15年で3000回登頂続けるコツは??
マツダミヒロ(以下、ミヒロ):山ちゃんにラジオのインタビューに出てもらったのは、結構前ですよね?
山内 良和さん(以下、山ちゃん): 1年半・・・2年くらいなるかもしれないですね。
ミヒロ:いや、もっと前・・・3年以上前になるような気がします。
山ちゃん:ホントですか?!
ミヒロ:あのラジオの反響はありましたか?
山ちゃん:ありました。ラジオを聞いて来てくださったお客さんも結構多く、詳細をミヒロさんが話してくださったので、とっかかりが早かったんです。
「こういう方だな」と知って接してくださり、しかもミヒロさんの信用の流れで来てくれたので、最初から心を開いてくださり、とても良かったと思います。
ミヒロ:今のお仕事は、マウイのハレアカラの山にサンセットと星を見る体験をするガイドですよね?
山ちゃん:そうです。
3000メートルを自分で登るのはかなり大変で、しかも慣れていない運転で防寒もなくて、上に上がっていくのはちょっと厳しいと思います。
そして3000メートルなので、ゆっくりと行かないと高山病にもなってしまいます。その手助けを最初から行うことで、高山病になることは99%ありませんので、初めはツアーで行かれた方がいいと思います。
ミヒロ:なるほどね。
今日聞きたいと思っていたことなんですが、何回ハレアカラに登られたんですか?
山ちゃん:キッチリと数えてはいないのですが、もう15年になるので3000回は登っていると思いますねぇ
以前は週に7回行っていたので。
ミヒロ:(笑)毎日じゃないですか!
山ちゃん:向こうに家があった方がいいんじゃないか!ってほど行ってましたからね(笑)
今は、ハレアカラの規定で週5になったんですけど、体を休めるという点では良かったと思います。
ミヒロ:ハレアカラの規定がなかったら、今も週7で行くかもしれませんか?
山ちゃん:週8は行きたいんじゃないですかねぇ 午前、午後で(笑)
いやぁ・・・でも、週7が限界ですね。毎日3000メートル上がって下りるのは、毎日加圧運動していることと同じですからね。逆に言うと『健康』ですね!
3000メートルには、ウィルスみたいなものはないし。
ミヒロ:風邪ひかないって言ってましたよね?
山ちゃん:全然ひきません。3000メートルの方が体の調子が良かったりするので。多分、向こうに体が合ってるんでしょうね。
ちょっと大きめの高野山って感じですね(笑)あ、失礼ですね、すみません。
ミヒロ:続けるコツを知りたいと思うのです。
ぼくは続けることが元々苦手で、でも、『魔法の質問』を毎日10年くらい書いていたんですけど、それはただ10分くらい書くだけなので、山ちゃんの1日の活動に比べると全然足りないんですけど。
そもそも始めるときは、続けられると思ってやっていたんですか?
山ちゃん:逆に言うと、続けられるという気持ちがなくて、毎日楽しんでやっていたら・・・もう3000回になったのか!という感じですね。
ミヒロ:3000回ですよ!早くないですか!!!(笑)
山ちゃん:ビックリしますよね!(笑)
目的を持っちゃうと、それが終わったときにガッカリしちゃうんですけど、目的を決めないで、毎日 お客様の心に響く顔を見ているだけで『毎日が生放送』。
それが面白いかなと。
決まったものの答えが返ってこないし、そういった部分では生物を扱っている感じがあります。
ミヒロ:最初は100回、1000回とか、そういう目標は全然立てなかったんですか?
山ちゃん:全然なかったです。
ミヒロ:何年続けよう!とかも?
山ちゃん:全然なかったです。「とにかく、食べるために稼がなきゃ」ということが最初はあって、それからやっているうちに、日本のお客様は、悩み事を内に隠してあると気づくようになり、発散する場所になればと思いました。
『ただ大自然を観る』、『宇宙を観る』、『星を観る』ことで、自分の存在のちっぽけさをリアルタイムに感じて、変化していく顔を見ているだけでも楽しいと思いますね。
あの世界を観たことがある人は少ないと思うんですよね、3000メートルで星を観るということは。しかも、1時間半でパッと行けて帰れちゃうというのは手頃ですし、世界観も変えれますし、日本では味わえないものかな、という感じはします。
ミヒロ:続けるコツとしては、大きな目標は立てても立てなくてもどちらでもよくて、その1日を味わう、楽しむとか、そういうことがコツですか?
山ちゃん:そうだと思います。
毎日、毎日、千差万別のお客様がいらっしゃるのですが、基本的に星の下では『学歴』も『年功序列』もほとんどなくて、『平等』で話ができて、お互いに触れ合うことができるので、ニュートラルになる感じがします。
それで、自分の今までの体験談みたいなことを少し話しながら添うことで、原画が装飾画になっていくんです。それは作りものではなく自然なものだから、感動すると思いますね、ひとつひとつに。
2. 結局は「お互い人間だから」
ミヒロ:悩みを持った人というか、日本で一生懸命働いて、息抜きとかでハワイ旅行に来て、マウイの星を観るという人が多いと思うんですけど、先程の言葉を借りて言うと、「悩みを持ったままの状態でいる」という人は見て感じるんですか?
山ちゃん:あぁ、分かります。見てて。
ミヒロ:分かります?
山ちゃん:「あ、この人これで悩んでいるんだな」という感じが。
でも、それぞれにカンバセーションをしていくので、お客様同士も友達になりますし、日本に帰ってぼくの知らないところでオフ会をやったりとかも全然ありますし、変わっていきますよ。
見てくれのおっかない人が優しかったりする、面白いところもありまして(笑)
話していくうちに人間性がみんな出てきますし、最後は山頂でゼロになった状態で、みんなが平等の中で、あの星空を観ていると、自分の存在の小ささも分かる。そのひとつひとつのお手伝いをしているような感覚です。
ミヒロ:そのときに、気をつけていることとか、意識していることは、どんなことがありますか?
山ちゃん:まずは3000メートルなので、高山病にならないことですね。
いちばん最初にコーヒーを飲まれたり、食べ物を少しお腹に入れたりして、500メートル、1000メートル、2000メートルと上がっていきます。
15年やっていて、1人も高山病になった方がいらっしゃらないんです。
手法として、自分でレンタカーを借りて一気に上がって病気になるよりは、絶対にツアーが良いと思いますし、これはガイドとしてのテクニックなんですけど、風が吹いている方向などがあるんですね。A地点がダメだったらB、そこもダメならCという押さえがあるので、それが分からないと、ただ「寒い」で帰ってきちゃう。
天気だから見えないときも、見えるときもあるのですが、それを臨機応変に変えていけるというのは、長年の経験でもあり、そこには強いと思います。
ミヒロ:先程の、悩みがどんどん解決されていく、という点で、山ちゃんがお客様に関わるときに意識していることとか、関わり方というのがあるんですか?
山ちゃん:あります。
意味深のお客様もいらっしゃるし(笑)、余計に突っ込んではいけないというような部分もあります。
結婚されていない方とハネムーンのカップルが一緒だったりすることもありますので、そのあたりはある程度の気を遣います。
でも、結局は「お互い人間だから」、離婚もするし、結婚もするし、いろんな体験がある。それよりは自分の生き方、どうやって生きていくか、とか、ベクトルを固執するのではなく、もっと違うところに向けてくださいという感じにはしていますね。
ミヒロ:お客様から学んだ生き方についてなど、お客様と触れることで学んだことはありますか?
山ちゃん:ありますよ。
たとえば、1000メートルのクラロッジという所に寄って一呼吸置いたりするときなんですが、自分の年を言うと「あなたより10歳上なのよ、わたし」と言うように、もっと年上のアメリカ人の方で働かれている方も多かったりしますし、コンビニエンスストアを何店もされている方に「大変なことはありますか?」と聞くと、「土下座は100回はしてますよ」とか・・・
お客様のそんなお話を聞くと、ぼくは土下座したことはないから(笑)それぞれにいろんな体験をされていることを知りますし、その負担度はその人自身にとってはキツイことですけど、まわりの他の人にはその方々は優しく、柔らかくて。
苦労されている方ほど、優しいですし、柔らかく、トゲトゲがないなと感じます。いろんなハードルを超えていらっしゃる方だからこそ、優しさが深いですね。
ミヒロ:なるほど。苦労している人ほど優しい?
山ちゃん:優しいですね。
人の荷物が重く見えたときに、「自分の荷物と変えてくれ」と頼み、実は変えて持った荷物の方がズッシリと重かった・・・というような優しさを垣間見ることもあります。
人の生活は軽く見えがちで、本当は笑っていても、その裏には何があるのだろう?みたいに感じる方はたくさんいらっしゃいます。だから、ぼくの方がツアーで勉強になっていることが多々ある気がします。
若い方からお年寄りの方までがツアーにいらっしゃるので、コンビになると面白い現象が起きるんですよね。ほんと千差万別です。
何万人も見ているから、「この人にはこれを言ってはいけないな」とかもあるんですよね。それはもう体で覚えているというか・・・
3. 自分を出さない人は、相手も心を開かない
ミヒロ:今まで何万人ですか?
山ちゃん:2万人以上だと思います。
ミヒロ:その方々を見ていて感じる、人との関わり合いのコツとは何だと思いますか?
山ちゃん:そうですねぇ。自分を出さない人は、相手も心を開かない気がしますよね。大体、自慢話をしている人は10分で終わります。みんな聞いていない(笑)人は失敗談は聞きたいけれど、成功談ほど聞きたくないものはないんですよね。
ミヒロ:なるほどね!
山ちゃん:「こんな苦労しちゃったんだよね」みたいな話の方がいいですね。
「自分は良い所に住んでいて、孫は何人いて、ここに行った・・・」だと、話がつまんないです。
話は、失敗談の方が心に響くことがいっぱいあったりします。
話が上手いな、下手だな、というのはそこで選別し、こっちに振った方がいいなと考えたりもしますね。
ミヒロ:なるほどね。
ということは、失敗した方がいいんですね、人は?
山ちゃん:絶対!失敗した方がいい。
「失敗を恐れるな」ということを聞くことはあると思いますが、それより、成功を恐れちゃった方がいいんじゃないですかね?
ミヒロ:え?
山ちゃん:逆に「あ、ヤバい!成功してる」、「成功しちゃって、なんかあるんじゃないかな」と考えていた方がいいですよ。
失敗だとそれ以下はないですから。
「あぁ、また失敗した」と思ってる方が気楽ですし。
成功しようと思うのではなくて。
いい話がありまして・・・有名な将棋棋士の大山名人に、「どうやって勝ったらいいですか?」とインタビュアーの方が言ったんですよ。
名人は「一手でも遅く負ける方法を考えろ」と言ったそうです。
ミヒロ:どういうことですか?
山ちゃん:「勝とうと思うな、負けまいと思え」って言うんですね。
そうすると絶対に勝てる、人間は。
要するに、成功しようと思わないで、失敗しないようにしようと考えた方が成功率は高いということを本で読んだことがあります。
「あぁ、失敗しちゃった」は勉強だし、もう次の失敗はしない。
でも、成功、成功、成功していると、最後になんかあるんじゃないかな、と。
気持ちの持ちようだと思うんですけどね。
ミヒロ:失敗を恐れた方がいいというのは、あまりみんなは思っていないかもしれません。みんな成功しようと・・・
山ちゃん:(笑)成功ばかりしちゃっている方を恐れた方がいい。
失敗して「あ~よかった!失敗したよね」、「次は失敗するのはやめよう」の方がいい。風邪をひいた人の方が、元気な人より「次はこうしよう」と思うじゃないですか。
ミヒロ:うんうん。
山ちゃん:熱が出た人の方が、頭が痛いことが分かりますし、1回も熱が出たことのない人の方が危ないですよね。1回も悪くなったことがないから。
人間の心の抵抗力が出てくるから、絶対そっちのほうがいいと思いますね。
あと、楽な方、辛い方は、辛い方を選んだ方がいいです。
ミヒロ:それはどうしてですか?
山ちゃん:楽な方を選んじゃうと、それ以上にキツイものが見えなくなる。
ぼくもずっと、他のいろんな仕事をしてたんですけど、年に3回しか休みがなかったところがあったんですね。そのときに「とにかく休みたい、休みたい」と思ったりするんですけど、あれを体験しちゃうと週一の休みがパラダイスですよ。
ミヒロ:週一休みが(笑)
山ちゃん:「すごい!週に1回休めるんだ!」って(笑)
辛い方を選んだ方が、後が楽なような気がしますね。それ以上のものができるようになるから。
楽、楽、楽を選んじゃっていると、キツイことが本当にキツくなっちゃうから。
ミヒロ:なるほど。
人って、若いときの方がエネルギーがあったりするじゃないですか。
そのときに大変な方が、後から大変よりいいですね。
山ちゃん:そう思いますよ。
年取ってくるとつぶしがきかなくなるというか、徹夜もできなくなるし・・・
若いうちは何でもできるじゃないですか。
やれるうちにやっておいた方がいいと思いますし、動けなくなって「何処かに行きたい」と思っても行けないですし。
やれることはやれるうちにやっておいた方がいい。
▼インタビューは後半はこちら(明日更新)
好きなことをやっているかどうかの時間の多さが大事
山内 良和さんも登壇予定!
しつもんカンファレンス
2019年11月9日(土)10日(日)
上記の魔法の質問に答えてみる