2020年8月30日(日)10:00〜11:30
「しつもん×探究トーク」第一弾を開催し、400名以上の方にご参加いただきました!
もっともっとたくさんの方に、この対談が届きますように。
これまでの対談はこちら
・「しつもん×探究トーク」第一弾 ゲスト講師 : 学校法人軽井沢風越学園 寺中祥吾さん
・「しつもん×探究トーク」第一弾 ゲスト講師 : 学校法人軽井沢風越学園 寺中祥吾さん【2】
・「しつもん×探究トーク」第一弾 ゲスト講師 : 学校法人軽井沢風越学園 寺中祥吾さん【3】
1. ゲスト講師
学校法人軽井沢風越学園 寺中祥吾さん(アンディ)
「体験から学ぶ」という学習領域を背景に、教育研修関連企業、大学教員を経て、現在は2020年度開校の軽井沢風越学園に所属。ふじしーとは10年来の友人。時々会って話すけれど、今回はみなさんに聞いてもらいながら、もう一歩踏み込んでやりとりできるのが楽しみです!
2. 対談者
しつもん財団理事 藤代圭一(ふじしー)
教えるのではなく問いかけることでやる気を引き出し、考える力をはぐくむ「しつもんメンタルトレーニング」を考案、全国大会優勝チーム、アイスホッケーU14日本代表チーム、さらには地域で1勝を目指すキッズチームまで、数多くの実績を挙げている。現在はスポーツだけでなく、子どもの学力向上をめざす保護者や教育関係者に向けた講演・ワークショップをおこない、高い評価を得ている。著書に『しつもんで夢中をつくる!子どもの人生を変える好奇心の育て方』(旬報社)ほか。
3. しつもんをシェアすること
アンディ:そうだね。なんかここまで話してきたことを1つ整理すると、同じ探究者として自分の中にある問いとか、自分の中にあるしつもんをシェアするとか、おすそ分けするということは、積極的にやったらいいなーと思っていて。今回も、ふじしーからの投げかけで、こうやってみんなが考えているけど、同じ探究者として自分はこんな問いを持ってるんだよね。とか、そのことについてどう思う?とか、自分の問いをシェアしていくっていう「しつもん」の使い方もあるんじゃないかなぁーと思う。
問う側、問われる側っていうことじゃなくて。それって、子どもたちにとっても「自分の中にはどんな問いがあるのかな?」というふうに、特に年齢が上がってくると、それを考えるきっかけになるのかなと思っていて。
例えばね、今、実際にうちの家で「子どもの中学校どうする?」とか、そういう話があるんだけど、そのときに子どもの中学校をどうするか?ということで子どもとやりとりするのか、それとも、おれは10年後のことをどう考えてるのか、おまえはどう考えている?っていう風に、一緒にそれを探究していくのかで大分変わるなぁと。
ふじしー:そうか。じゃあ考え方、答えをシェアするんじゃなくて、問いをまずシェアするっていうのはいいんじゃないかといううことだね。
アンディ: うん。
ふじしー:確かにそれはいいね!今は学校でもそういうこと、アンディは意識してしたりするの?
アンディ:えっとね。どちらかというと子どもたちとの関わりよりは、大人との関わりの方が多いから、スタッフ間ではそういうことは意識している。あっという間に、大人同士でも準備する側、受け取る側とか、考える側とか参加する側、考えさせる側みたいな役割があっという間に分かれちゃうなっていうのが、この数カ月の実感で。だから一緒の問いをシェアできれば、動く方向が変わってくる。
ふじしー:いいね、それ。僕たちのしつもん、僕自身もそうだし、財団としてもそうなんだけど、最終的な目指しているゴールって、子どもたち自らが問いを持って進んでいくことで、それはまさに探究することなんだけど。
その前のステップとしてはまず、僕たちが良いしつもんをしようということを講座とかでお伝えしてて、最終的に子どもたち自身が自ら問いを持って生きていってほしいな。という風に思う中で、問いを共有するみたいな習慣とか文化みたいなのを作っていけたらすごくいいよね。
アンディ:うん。
ふじしー:前にドイツのある幼稚園で「哲学の時間」っていうのを幼稚園でやっている方々がいて、どんなやり方をされているのか視察させてもらったんだよね。その時にしてたのは、子どもたち、幼稚園児の子どもたちが日常的に持っている「しつもん」を紙に書いておいて、それを瓶の中に詰め込んでおくんだよね。
その哲学の時間で、みんなが日常的に持っていた問いを共有して「あなたはどう思う?」って、別に答えを出す時間ではなくて、みんなが持っている純粋な問いを共有する時間で、僕自身も参加させてもらって、すごく楽しくて。
「こんなことを考えているんだ」っていう発見にもなるし「そういわれてみればどうだろう?」っていうような、自分自身が内省する機会にもなったし、その人の理解にもつながったし。ある女の子が、5歳の子だったと思うんだけど、その子が書いたらしいしつもんには
「どうしたら好きな人が、最愛の人だとわかるんですか?」みたいな質問があって。
ふたり:笑笑(参りました…という笑い)
ふじしー:子どもたちは答えられるんだよ、それに対して。「僕はこうだと思うよーっ」みたいな。僕たち大人はなぜか答えられないっていう、、その年代にしか持てない問いっていうのがあるんだなぁ〜って。「どうして誰々くんの物で遊んじゃいけないの?」とか、そういうのが入ってた、瓶の中に。なんかこう、ね、常識的に言うことはできるんだけど、「あなたはどう思っているの?」みたいなことを言われると難しいし、そういう問いかーってすごく感動したの。
アンディ:おもしろい。それ、ドキッとするよね。
ふじしー:ドキッとする。子どもたちが持っている問いに、ピュアな純粋な問いにはすごく力があるなぁ、とすごく感じたなぁ、その時。
アンディ:反対に、外から見学というか、オンライン上で学校のことをやり取りしていくときに、問いを真ん中に置いてやりとりしたいなぁと思って、そんな風に投げかけるんだけど、どうしても一問一答というか、こっちが答えを持っていてそれを聞くっていうようなやりとり。例えば「英語はどうしているんですか?」とかそんなやりとりになってしまうのを、どうしたらいいのかな?っていうのは、小さな問題意識で。
これは「問いって何なんだろう?」っていうことなんだけど、答えがあることを聞きたくなる。それ全然悪いことじゃないんだけど、でもそうじゃない問いも立てられるっていう風に、僕らがまずは問いを持ってく。それを日常にしてし身体化していくということが、とっても大事なことだなぁと。
ふじしー:そうだね〜確かに。今日、皆さんが貴重な時間を使ってここに参加してくださっている方もそうだし、僕たちもセミナーとか研修とか講演会とかさせていただく中で、少しずつそういう葛藤はあって、ある程度の答えというものを聞きにきてくださっている方もいる中で、どちらかというと僕たち財団って、その答えでなく、問いを見つけるみたいなことをすごく大事にしているから、一方では「そうですよね」って理解いただける方もいれば、一方では「なんかちょっと消化不良だな」というか「もうちょっと具体的な答えを提示してほしかった」っていう考えもあって。
もちろんその通りだなと思う中で、僕たちも葛藤して進んでいってるんだけど、じゃあ、いざ僕自身もセミナーとかに参加しようとなったら、やっぱりそういう瞬間って自分の中に生まれてるなぁってすごく感じるんだよね。答えを、一問一答の「具体的にここどうしてるんですか?」ってことを聞きたくなってしまう。アンディの学校は今すごく注目もされているから色々ありそうだね。今は、たくさんそういう瞬間がね。
アンディ:そうだね。もちろん、その1つの答えが次の問いのきっかけになるということだってあるんだと思うんだけど、
ふじしー:うんうんうん。
アンディ:習慣的にそこから自分なりの問いを立てられるかどうかっていうことは、本当に習慣だなぁと思うから。
ふじしー:時間をかけて、一緒に作っていくっていうこと?
アンディ:まあ、そういうふうに意識して大人が答えを聞くとか、子どもたちに対しても、その子が持っている答えを聞きたいとかその子が持っている情報を得たいということじゃなくて、一緒に考えていきたい。
なかなか答えが見つからないようなことを投げかけていけるか?っていうことが、1番最初のメタメッセージにもつながると思うけど。
ふじしー:そうだね。確かに。そうか、やっぱ問いを持って帰ってもらうっていうのが、今日の時間もよさそうだね。では、残り10分ほどになってしまったんですが。
そうですね、今コメントいただいたように『ぶっちゃけ先生に余裕がない。人が足りない』っていうのも本当に現場感としてはその通りだなと思っていて。何に優先順位つけるのか、何にエネルギーを注ぐのか。と本当に難しい問題で、これも答えがないよね。そこの学校によっても違うでしょうし。
4. 誰かの探究のそばにいるために
ふじしー:では、しつもんをピックアップしますね。『探究をもっともっと深めたくなるしつもんの仕方ってありますか?』っていうしつもんなんですけど、どうですか?
アンディ:探究を深めたくなるしつもん、、、その子は今、探究が深まっていないという状態ということなんですかね?
ふじしー:そうかもしれないし、そうだね。
もっともっと深めてほしいってこっちの期待があるのかな。
アンディ:うーん。同僚のスタッフが「探索」と「探究」という言葉の定義を本人の中ではっきり分けていて、
ふじしー:おーーー
アンディ:探索っていうのは、すごいノイズがいっぱいある段階。ただ遊んでいるように見えるとか、ちょっとやっては止め、ちょっとやっては止め、みたいなことを繰り返しているような段階。でもそういう「豊かな探索」をする中で、探究が生まれていくんだっていうことをその人はすごく大事にしていて。
だから、「探究が起こってないな」っていうときに、ちょっと今回のテーマとはズレるかもしれないけど、しつもんで何とかしようって、言葉でそれを引き出そう引き出そうとしてしまうと、あまりいい方にはいかないんじゃないかな、って気はするな。
ふじしー:やっぱり僕たちはしつもんに愛着があって、こだわりがあってやっているけど、僕たちの中でも「しつもんしない」っていうこともすごく大事にしてて。やっぱり1つの手段であり方法だから、目的を見失ってしまってその方法を重視してしまうと、その子にとっては最適なものじゃなくなる可能性もあるよね。
ふじしー:他にはですねー、、『喜びからの参加をしてもらう、やりたくない時の強制参加を促さない。例えば幼児の子たちね。来てくれるだけでありがとうと考えているのがラグビースクールの理念です。ただ、練習や試合への入口がスロースターターであるのが悩みで、終わりに近づくにつれやる気になってくるので、結果、技術が上達したり、勝利したりというのが伴わないのが悩みです。いい入り方はないでしょうか』
アンディ:えーー!?ふじしーどうですか?
ふじしー:僕の考えだけど。特に幼児とか小学校低学年の場合「楽しいって感じてくれるだけでいい」と僕は思っちゃってるから、あんまりこう、そこにエネルギーを注いでないかな〜っていうのが正直なところですが、、
今日も最初にみなさんに「今日このセミナーが終わった時にどうなっていたら最高ですか?」ってしつもんをさせていただきましたが、そのしつもんは子どもたちにすることはよくあります。全体で集めてやることもあるし、普通にラフな状態で、幼児の子たちと一緒に遊びながら「今日はどんなことしたい?」とか「帰る時どんな気持ちになっていたい?」って聞いて始めるというのはあるかもしれない。
子どもたちもそれに答えてみると、「あ。ちょっとこうことを僕もやりたいんだな」って認識したりとかが生まれて、やる気とか練習の質が変わるというのはあるかもしれません。
アンディはどうでしょうか?
アンディ:本人が決めるっていうのはすごい大事だなぁと思っているから、参加しないという時に、参加しないというのを決めている場合と、なんだかフワッとやらない、、やってないけど参加しないということは別に決めていない状態っていうのもありそうだなって。
「やりたい時は参加してね」っていう日もあっていいし「スタートは全員一緒にスタートするよ。でも抜けたくなったらいつでも言いにきてね、いつでも抜けていいよー」っていうふうに参加しないっていうのを決める場面を作るやり方もあるかなーと思ったかなぁ。その時に「抜けて何したいの?」とか「どんな気持ちで今日は参加しないって決めたの?」とか「あ、そっかそっかそういうことをやりたくなったんだ。じゃ、後でまた話聞かせて」とか、その子が決めたことを分かち合って。
だから、ラグビーには参加してないけど、何かには参加している状態っていうのが生まれてくるといいのかなぁ。
ふじしー:いいね!では、もうすぐ終わりの時間になりますが。
いつもはね「今日の学びは何がありましたか?」ってしつもんするの大体。今日のこの時間を通じて、90分皆さん貴重な時間をいただいて「どんな気づきと学びが生まれましたか?」というしつもんをするんだけど、さっきもあった通り、問いをシェアするというのはすごくいいなぁと思ったので、皆さんへのしつもんは、
「この時間を通じてどんな問いが生まれましたか?」
その問いをチャットで教えていただければと思います。例えば、あらためて「探究とは何か」っていう問いが生まれたら「探究とは何か?」ってメッセージしていただけたら嬉しいです。
(コメント)『創造的な探究とは何か?』
ありがとうございます。あ、もう僕が話すまでもないですね。笑。
今日この時間で生まれた問いを共有して、終わりに近づけていけたらなと思っております。
「今日この時間を通じて生まれた問いは何がありましたか?」
その問いをシェアしていただければと思います。
(コメント)
『今、自分は何を感じてる?』
『誰のための問いなのか?』
『問いのたて方』
だから「問いにはどのようなたて方があるか?」とか、そういう感じですかね。
『評価との付き合い方』
『あなたが本当に言いたいことはなんですか?』
『豊かな経験をどのように生み出しますか?』
『評価から解き放つしつもんとは何か?』
『自分が本当に感じていることは何か?』
『今日の学びを仲間にシェアすることによって、どんな具体的活動に生かすことができるか?』
『幸せに生きるとは?』
ふじしー:いいですね。アンディ。これやっぱり。問いをシェアするっていうのは。
アンディ:なんか、どれも考えたくなるね!
ふじしー:これ、みんなの問いを持ちよってなんかこうまた別でね。今回は僕とアンディしか顔が見えない形だったからちょっとね、申し訳ないなっていう気持ちがあったから、問いを持ちよって学びの場をつくるということもやってみたいな。
アンディ:確かに。
ふじしー:アンディはこの時間いかがでしたか?
問いが生まれた瞬間があるとすれば、それはどんな問いでしたか?
アンディ:やっぱりふじしーから聞いてもらったことで「私の探究は何か?」っていうことかな。「私は今、何を探究しているのか?」とか「私の探究は何か?」ということ。
自分がそんな風に生きていないと、誰かの探究のそばにはいられないなぁ。と改めて思いました。
ふじしー:おおーーー。ぜひ最後に、アンディからもし他にもメッセージがあったら教えてほしいんですけど、何か言い残したことありますか?
アンディ:休みの日の朝から、何かここに自分の学びがあるかもしれないっていう風に集まって、そういう私たちだから未来は大丈夫だと。
ふたり:笑笑
アンディ:そうやって迷いながらやっていけば絶対大丈夫だという、ちょっとした楽観みたいなのはあります。
ふじしー:よかった。今は県外への移動とかもなかなかできないし、直接お話を伺うってことも難しい時期だけど、もうちょっと良くなって、アンディたちもより学校が安心してオープンできる状況になったら、今日参加の皆さんとアンディの所に押しかけて「最近はどうですか?」って、みんなで行けたらいいなってすごく思ってます。
アンディ:本当に、生の葛藤とか苦悩をまたみんなに聞いてもらえるのが楽しみです。
ふじしー:では、今日はアンディも言ってましたが、休みの朝の時間にご参加いただき、ありがとうございました。僕たち自身も、毎年行っているしつもんの研修で、どのようにすれば皆さんとより良い形で作っていけるかということを考えて、実践した第1回目ではありましたが、こうやってご参加いただきとても嬉しく思っています。
今後、毎月開催したいなと思っていて、次回は9月27日に僕が今半分住んでいる海士町(あまちょう)、隠岐諸島海士町の、島前(どうぜん)高校の学校経営補佐官の大野さん、大野佳祐さんをお招きして、9月27日19時から20時半で開催したいと思ってますので、もしご都合つくかたはご一緒していただけたらとても嬉しいです。
この学校も10年前廃校になる寸前だったところからV字回復して、今は島外の子どもたち含め300人以上の子どもたちが通っている、どちらかというと、さっきアンディの話であった課題先進地みたいなところの学校で、また違ったおもしろい話が聞けるんじゃないかと思っております。
また、今日この後メールで今日の振り返りが進むようなしつもんと、次回のご案内もさせていただきますので、メールをご覧いただければと思います。
では、長い時間ありがとうございました。またお忙しい中ご参加いただいてありがとうございます。これからも、こうやって、アンディも言ってましたが、一緒に「探究ってなんだろうね」っていうことを、僕たちが答えを伝えるんじゃなくて、一緒に考えられるような関係を皆さんと作っていけたらと思ってますので、末永く一緒にお付き合いいただけたら、とっても嬉しいなと思います。
では、お忙しい中、ご参加いただきありがとうございました。
アンディ:ありがとうございました。
5. あとがき
ふたりから発せられる純粋でリアルな言葉が心地よく、あっという間の90分でした。「探究」を本質的に捉えるための視点があちこちに散りばめられていて、正解は語られないけれど不安はなく、どこかワクワクしながら聴き入る私がいました。そうか、この感じが「探究」なのか!と妙に納得しながら、森の中を探検しているような感覚でどんどん奥に奥にと引き込まれ、、トークが終わったあとすぐにまた「もう1回見たい!!」という気持ちになったのがとても印象的でした。
皆さんそれぞれの現場で、真ん中におきたいことを再確認し、大切にしたいことを大切にするための新しい視点やヒントが見つかる、そんな対談だったように感じます。
豊かに探索し、そばにより添い、共に探究し続ける私たち大人の姿が子どもたちにどんな影響を届けてゆくのか?今、そこに希望を感じられていることが、とてもしあわせです。
しつもん財団:高橋香織
これまでの対談はこちら
・「しつもん×探究トーク」第一弾 ゲスト講師 : 学校法人軽井沢風越学園 寺中祥吾さん
・「しつもん×探究トーク」第一弾 ゲスト講師 : 学校法人軽井沢風越学園 寺中祥吾さん【2】
・「しつもん×探究トーク」第一弾 ゲスト講師 : 学校法人軽井沢風越学園 寺中祥吾さん【3】
上記の魔法の質問に答えてみる