
優れたビジネスパーソンは、多彩な人脈を持っています。1人ではとても解決できないような難題に直面したときでも、それを乗り越えるのに、人脈は心強い味方になります。
人材ビジネス大手のエン・ジャパンが行った「仕事における社外の人脈」のアンケートによると、「仕事をしていて、社外の人脈の必要性を感じますか?」という問いに、約8割の人が「感じる」と回答しています。
ところが、「社外の人脈は広いほうですか?」との問いには「狭いと思う」(44%)、「かなり狭いと思う」(10%)と、半数以上が狭いと回答。人脈づくりにみんな悩んでいる様子がうかがえます。
不思議なもので、人脈は「広げよう」という思いが強すぎると、意に反して広がっていきません。人脈づくりにはコツがあります。
それは、
ご縁は広めるものではなく、深めるもの
ということです。むやみに広げようと思わず、身近にいる人たちとのご縁を深めていくと、結果的に広がっていくものなのです。
1. 名刺コレクターになっていませんか?

ぼくも以前は売り上げを伸ばしたい、顧客を増やしたいという思いから、異業種交流会によく顔を出していました。「ホームページの制作会社の社長をしています。何でもできます」とあいさつして、名刺を配りまくっていました。
そのときは、「とにかく1人でも多くの人と知り合いになろう、そうしたら運命的な出会いがあるかもしれない」という、ほのかな期待を抱いていたのです。
その結果はどうだったか。
確かに名刺は山のように集まりました。もちろん、名刺を交換した人たちにフォローのメールを出しましたし、その後、何回かメールで情報交換する人もいました。
でも、2、3回やり取りしてそれっきりという人がほとんど。人脈が広がった、という手ごたえを感じることはありませんでした。
ところが、ちょっと考え方を変えて行動したら、みるみるうちに人脈が広がっていったのです。そのときに気づいたのが、「ご縁は広げようと思ってはいけない。ご縁は深めるものだ」ということです。
この気づきは、偶然の出会いがもたらしてくれたものです。
前述した通り、1999年ごろ、ぼくはネット関連の会社を経営していました。幕張メッセや東京ビッグサイトで行われるインターネット関連の展示会には必ず足を運びました。
広い会場内を歩き回り、「疲れたな」と思って休憩スペースにあるベンチに座り、ふと隣を見ると、同じように座っている方がいます。「あー、こんにちは。人が多くて疲れますね」という他愛のない会話をして、名刺交換をしました。
彼は展示会で小さなブースを出展している人でした。このときは、自分を売り込もうという考えはなく、ごく自然体で会話しただけでした。
ところがその後、彼とメールのやり取りや食事などを重ねるうちに、共通点がいくつも見つかり、距離がぐっと縮まりました。深い話ができる間柄になり、ついには一緒に仕事をしたり、ぼくが東京に出てきたときには家に泊めてもらったりと、ひとかたならぬご縁へと発展していったのです。
質問家としての活動を始めてからも、彼が仕事につながる人を紹介してくれました。
いい人と出会いたいと焦って名刺を配りまくっていたのに、偶然出会った人とこんなにご縁を深めることができたのは、自分にとって大きな発見でした。
2. 人数を絞り、「相手のために役立てること」を考える

名刺交換をしただけでは人脈は広がりません。この出来事をきっかけに、ぼくはやみくもに数多くの出会いを求めることをやめました。
「数の多さよりも、1つひとつの出会いを深めよう」
人との出会いがあったら、「この人のために何か役に立つことはできないだろうか」「一緒に何かできないだろうか」と考えながらじっくり話をするようにしたところ、人脈がどんどん広がっていったのです。
1人とご縁を深めていくと、親密度が上がっていくとともに、その人が持っている人脈も、向こうから近づいてくる。だから、ネットワークが広がっていく速度もかなり速くなるわけです。
たくさんの人と名刺交換をするのは、チャンスが広がるという意味ではいいかもしれません。ただし、広くて浅い付き合いになるのであれば、いい人脈には発展していきません。
ご縁は、広げようと行動すると広がらないけれど、深めていくとおのずと広がっていくものなのです。
3. 大事な人はすぐそばにいる

ご縁を深めることで、新しい出会いを人脈に育てていくとともに、もう1つ忘れてはならないことがあります。それは、あなたのすぐそばにいるキーマンとのご縁を深めていくことです。
「自分のそばに、そんな大事な人なんかいないよ」と思う人がいるかもしれません。そこで、身近なキーマンに気づくための方法を紹介しましょう。
これはぼくも自分に問いかけていることなのですが、今の自分や過去の自分を「ご縁」というキーワードで振り返ってみます。するとおもしろい発見があります。
まず、最近自分に起こっている「いいこと」を1つ思い出して、決めてください。では、質問を2つします。
・あなたに起きている「いいこと」は、いつから起きているのだろう?
・あなたに起きている「いいこと」は、誰とどんなご縁があったから起きているのだろう?
4. キーマンとのご縁をさらに深める

ぼくの場合、質問家として講演や研修で全国を飛び回り、「魔法の質問」の認定講師の育成事業を展開できているのも、あの人と出会って、あの人を紹介してもらったからだな、という人物が1人思い浮かびます。それは、日本でベスト5に入る経営者向け日刊メールマガジン「がんばれ社長!」を発行している武沢信行さんです。武沢さんこそ、ぼくにとってのキーマンなのです。
ぼくは海外でも研修や講演などをしているのですが、そのきっかけをつくってくれたのも武沢さんでした。2005年に最初の本を出したのも、武沢さんからいただいたご縁がきっかけでした。
自分を認めて広めてくれる人、きっかけをくれる人というのは、実はたくさんいるわけではありません。その人こそがあなたのキーマンであり、ご縁をさらに深めていくべき相手なのです。
ところが、多くの人は、最も重要であるはずのキーマンの存在になかなか気づくことができないでいます。自分のキーマンに気づいたら、ご縁の法則の質問をしてみましょう。
ご縁を深めるために(今日)何ができますか?
フランク金子 says
相手の魅力を見つけ出す