人は、相手の話を聞くよりも、自分のことを話したいという思いが強いものです。それは1対1で話をするときも同じです。
自分が話そうとせず、相手に話をしてもらう。
そのきっかけをつくる問いかけ=しつもんを意識する。
これが、”たった1分で心をつかむ”ための大事なポイントなのです。いわば、ぼくが伝えたいのは「話さない力」を身につけてほしいということです。
相手の心をつかむためには、話術も交渉術も必要ではありません。あなたが自分から話そうとする時間はわずかでいいのです。

1. 会話のゴールへの道は無数にある
とくに初対面の場面では、最初にこの話題から入って、次にこのトピックに移って、最後にこのテーマに話を持っていこう・・・と、いわば台本を準備しておくという人も多いと思います。
会話のゴールを明確にすることは大切ですが、ゴールは決めても、ゴールに至るまでの過程まで決めてしまってはいけません。
台本にこだわりすぎると、弊害があります。
それは、会話そのものに集中できなくなることです。ある話をしていても、いつ次の話題に移ろうかということが気になってしまい、その瞬間、瞬間の会話がおろそかになってしまうのです。
すると、相手の話からキーワードをひろい出すことができないばかりか、相手が話したい話題に注意がいかず、こちらが聞きたいことしか耳に入ってきません。
ゴールへの道は、無数にあるはずです。
1本の道を通っていくことが義務づけられているわけではなく、会話のなかで自由に道を探しながらたどり着けばいいのです。
ゴールがあるからといって、常に論理が通って、道筋がしっかりとした会話だけが美しいわけではありません。会話を進めるなかで、新しい考え方に気づいて話に矛盾が生じることもあるでしょう。
大事なのは、今その瞬間に相手が何を感じているかです。それは、筋道を逸れないことに気をとられていてはわからないことなのです。
2. 台本にとらわれない

ぼくが、以前ラジオ番組に出演させていただいたときのエピソードです。
事前に、今日はこんな感じでいきますという台本を手渡されました。まず自己紹介、次はこのトピック、”質問家”がなぜ生まれたか、といったぐあいに、パーソナリティがどの順番で何を聞くかが事細かに台本に書かれています。
ラジオってこうして綿密に決めてあるんだと思いつつ、いざ本番が始まってみれば、台本とは違い「質問家なら、なんか僕にしつもんしてみてくれない?」というところからスタートしました。
収録が無事に終わり、台本をつくっている放送作家さんにお話を聞いてみたのですが、番組は毎回、台本どおりには進めないそうです。
それなら、なぜ台本が必要なのかというと、台本の流れが大事なのではなく、「台本があるからこそ自由にできる」ことを大切にしたいからではないでしょうか。
会話の流れをイメージしつつも、流れどおりに進めるかどうかにとらわれない。その場、その瞬間の雰囲気や生まれるアドリブともいうべき予想外の展開も会話の楽しみのひとつです。
人の話は、必ずしも整合性が取れているわけではありません。
ゴールはありつつ、予想外の展開を期待するくらいの心構えで臨むのが正解なのです。
その瞬間を大切にしていますか?
うさはむ says
これって、相手との会話だけではなくて授業案にも言えることかなって思いました。授業が大きな仕事なのに授業案を書くことへの苦手意識、億劫さがありましたが、自由に授業を展開するために必要な台本だと捉えたら、ハードルが低くなりました。