
「人間が合わせていけばいい」
2ヶ月の日本滞在も、いよいよ終盤。
残り1週間、と数えるようになって、自然と思い出すのは、山菜料理人さんから聞いた山の話だった。
温暖化で山がどんどん変わってきていて、頂上まで行かないと山菜が採れない。だから夜中の3時に起きて、9時間かけて毎日山を登るのだという。
その話を、淡々と、当たり前のように話していた姿。
そして、そろそろ戻るパリは、平均気温が例年プラス15度。エアコンのない暮らしの常識が、もう揺らぎはじめている。
出典:ポッドキャスト「ライフトラベラーカフェ」
cafe.238 人間があわせる
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1. 怒涛の2ヶ月、それでも「味わいたい」と思える日々
東京から始まって、山形、軽井沢、箱根、伊豆、沖縄、そしてまた山形。
気がつけば、ノンストップの2ヶ月だった。
わたしが「休めますかね」とつぶやくと、ミヒロくんは「無理でしょうね」と返す。
それくらいの密度。
それでもWAKANAが大切にしたい、と言葉にしていたのは「ただこなすんじゃなくて、味わいたい」という感覚だった。
暮らしも、予定も、仕事も、会食も。今この瞬間を、ちゃんと味わえる自分でいたい。
忙しさの渦中にいるからこそ、その姿勢が、毎日の体験のひとつひとつに静かな色をつけていく。
いまのあなたが、「ただこなす」のをやめて味わいたいことは何?
2. 山形の集い、遠くから聞こえる笑い声の幸せ
今回の日本滞在のなかでも、山形で過ごした時間は格別だった。
友人のシェフたち、その家族、子どもたち。みんなで集まって食卓を囲むと、もうシェフを超えて、ファミリーのような時間になっていく。
そのなかでWAKANAがにんまりしていた瞬間がある、と話してくれた。
「ちょっと席を離れたときにね、遠くからみんなの笑い声が聞こえてくるの。あれがすごく好き」
その場にいることもいちばん幸せ。でも、少し離れたところから、大切な人たちの笑い声を聞ける時間に、平和そのものを感じるのだという。
地球に住んでいる、と言いはじめて13年。家族のような仲間が、地球のあちこちにいる。
その響き合いが、自分のいまの暮らしを支えていることを、改めて思い出した日だった。
あなたが「遠くから聞こえてきたら嬉しい」笑い声は、誰のもの?
3. 2秒の動画が、暮らしに色を灯す

最近、WAKANAが少しだけ始めたものがある。
2秒の動画を毎日撮る「セットログ」。家族で共有できる、小さな映像の積み重ね。
写真だと「撮らなきゃ」と身構えるけれど、2秒の動画は気軽に撮れて、ちょっと動いているだけで、その瞬間の生きている感じが残るのがいいらしい。
「空間に命が灯る、色が灯る感じがする」
その言葉が印象的だった。
毎日のなかで、なにかを「味わう」ということと、こんな小さな映像を残すことは、実はとてもよく似ている。
長く立派なものでなくていい。ほんの少しの動きを、いまここに、残しておく。
それだけで、過ぎていく時間の色が、ちょっと違って見えてくる。
今日の2秒を切り取るとしたら、どの瞬間を残したい?
4. 気候変動の時代、人間が合わせていく
そしてもうすぐ戻るパリの夏は、ニュースを見るたびに息をのむ。
例年プラス15度、37度を超える日々。エアコンを設置できない家が多いパリでは、600ユーロほどのポータブルクーラーがどの家電屋でも品切れ寸前だという。
ヨーロッパ全域の平均気温が、もう静かに書き換わってしまっている。
そんな話をしていたら、出羽屋の山菜料理人さんの言葉が浮かんできた。
温暖化で天候が変わり、山菜や生き物が以前のように採れなくなってきている。だから、頂上まで行かないと採れない。夜中の3時に起きて、9時間かけて山に登る。そのために、いま膝を鍛えている。
淡々と「人間が合わせていけばいい」と話していた、その姿。
嘆くでもなく、敵にするでもなく、自分の足腰と仕事のあり方を、少しずつ作り直していく構え方。
気候は、もう「いつもの夏」を返してはくれないかもしれない。
そのとき、わたしたちにできることのひとつは、文句を言うことよりも、暮らしの形を少しずつ整えていくことなのかもしれない。
パリでの夏のすごし方も、家のなかの過ごし方も、出かける時間帯も、食べるものも。
「人間が合わせていく」という言葉を、今年の夏のお守りにしたい。
変えられない環境の変化に、あなたが合わせていけることは何?
まとめ

怒涛の2ヶ月のなかで残った景色は、山形で聞こえてきた家族のような笑い声と、2秒の動画に灯る暮らしの色と、淡々と「人間が合わせる」と話していた山菜料理人の姿だった。
世界はどんどん変わっていく。気候も、街も、自分の体力も。
そのなかで、何を恨むか、何を諦めるかではなく、どう合わせていくか。
その問いを持って暮らすこと自体が、これからの旅人としての一歩なのかもしれない。
味わいたい今を、味わいながら。
暮らしの形を、少しずつ整えながら。
今年の夏、あなたはどんな自分で過ごしてみたいだろう。














