質問で、部下と上司の関係は変わります。
それはぼくが自ら体験したから言えることでもあります。
いい質問をすれば、
いい答えが導き出されます。
最も大切なことは、
部下にどんな質問を投げかけるよりも、
その前に上司である自分にどんな質問を投げかけるか。
自分自身に対する質問とは、
より自分を成長させるための質問です。
まずは、自分にどんな質問をすればいいか?
その後に、部下に対してどんな質問をすればいいのか?
たったひとつの質問から、大きな変化が生まれる。
それをぜひ体験してください。

1. つい「教えたくなる」のが人間
人は教えたがる生き物です。
なぜ教えたがるという状況が生まれやすいのかというと、2人の人間がいた場合、知識と経験があるほうが話したくなるという習性が人にはあるからです。
これは、プライベートにおいても、職場においてもそうです。
誰かと話をしていて、「それは自分のほうが知っている」とどちらかが感じた瞬間に、もうしゃべりたくなってしまう、それが人の習性です。
職場において、知識も経験もある上司のほうが部下に教えたくなるのは当然のこと。だからこそ、「自分は教えたくなってしまう立場にいる」ことを理解しておきましょう。
2. 思いきって任せると、自主的に動いてくれるようになる

ぼくはよくセミナーを開催するので、当日も多くのスタッフに動いてもらうのですが、その準備をするときに、実はたくさんのことが気になります。
「会場の机はこう並べて、資料は・・・」
「あ、受付、違う。そうじゃなくって・・・」
質問の効果を知っているぼくにも、指示ばかりを出していた時代がありました。
でも、それを続けていると本当に忙しいのです。気になることばかりで、結局それらすべてに口を挟まないと、納得のいく結果にはなりませんでした。
そんなことを繰り返すうちに、「上司として、もっと相手に考えてもらわなければ」と改めて気づいたのです。そして、質問をどう活用していくかを考えました。
受付係には、「お客様に気持ちよく講座を受けてもらうためには、どんな接し方をすればいいと思う? それに答えながら動いてみて」と質問しました。
会場係には、「どんな誘導をしたら、スムーズに席につけると思う? 案内はどうしたらいいと思う? ちょっと考えてみて」と質問しました。
すると、相手に考えてもらうことで、それぞれが自主的に動いてくれるようになり、驚くほどその場がうまく回り始めたのです。
部下に質問する際、最初はその答えが気になります。経験の差もあるので、自分の納得するような答えや行動が返ってこないこともあります。しかし、部下に考えてもらうことで、結果的に想像以上のものを得られると感じています。
上司という立場にいると、つい口を出してしまいがちですが、それを続けていくと部下の成長を妨げてしまうということを覚えておきましょう。
3. 「1つ教えて、3つ考えてもらう」のバランス

ただ、部下の成長の過程において大切なのは質問だけ、ということではありません。
ぼく自身も会社を経営しているので、その経験から「教えること」と「考えてもらうこと」の2つのバランスがとても大事だと感じています。
人は教えてもらうばかりでは成長しません。でも、何も教えていないのに、すべて理解してもらうことも不可能です。
ぼく自身の経験では、2つのバランスは、「1つ教えて、1つ考えてもらう」よりは「1つ教えて、3つ考えてもらう」くらいのほうが、より相手の成長を促せると感じています。これはもちろん、相手との関係性や個人差もあると思います。
ただ確かなのは、「1つ教えて、1つ考えてもらう」のでは、人はあまり成長しないということです。なぜなら、1つの物事に対して1つの答えしかないということはないからです。
たとえば、新規顧客を開拓するときの場面を考えてみましょう。
上司「新規顧客を開拓する場合、最初はネットで情報を集めてメールを送ることが多いんだ。その他に、どんな方法があると思う?」
部下「えっと、営業レターを作って配るとかですかね?」
上司「いいね。他には?」
部下「異業種交流会に参加するとか?」
上司「いいね! さらに効果的なものはあるかな?」
部下「うーん、SNSで情報発信をしながら知り合いを増やすとか?」
上司「どんどん出てくるね! 他にはどうかな?」
このように、1つの物事に対して、さまざまな角度で考えてもらうと、部下の成長は加速していきます。ただ1つだけを教えるのでは伸びません。「教えること」と「考えてもらうこと」のバランスを意識することが大切なのです。
さまざまな角度から物事を捉えられるよう、上司のあなたがいくつかの質問を準備して、部下に聞くことができるといいでしょう。
・他には?
・さらに効果的なものはあるかな?
・本当にそれでいいと思う?
・最も効果的なものは何だろう?