海外講演でヨーロッパに行ったときのことです。
イギリスからドイツに移動する飛行機に乗ると、隣の席には体格のいいおじさんが座っています。何度も海外に行っていますが、ぼくは英語がまったくできません。
そんなぼくに、隣のおじさんが英語で話しかけてくるではありませんか。
ぼくは、彼の話の内容はまったくわかりませんでしたが、約1時間半のフライトの間ずっと、英語で「うん」「へえ」と相づちを打っていました。おじさんは、すごく満足そうな表情で飛行機を降りていきました。
言うまでもなく、相づちは会話においてかなり重要なものです。
この事例のように、ぼくはあなたの話を聞いていますよということを相手に伝えるだけで、安心感を与えたり、認めてあげたりすることができるからです。
相槌自体に意味がなくとも、そのトーンやしぐさは、重要なコミュニケーションの手段なのです。

1. 言葉も動きも不自然にならないように
話し手に気持ちよく話してもらえる相づちを打つために気をつけたいのは、「へえ」「へえ」「へえ」などといった同じ言葉を連発しないことです。
相づちにバリエーションを持たせることで、楽しんで聞いているということがより伝わりやすくなります。
あるアナウンサーの方は「ええ」と「はい」を使い分けています。また、トップ営業マンから教えてもらったのは「へえ」「ほう」「はあ」でした。
「ええ」「はい」という相づちは落ち着いた感じを受けますし、一方の「へえ」「ほう」「はあ」は、フランクな感じがしませんか。
加えて、相手のトーンに合わせて、相づちに表情を持たせるよう意識してみてください。
表情を出すといっても、大げさなしぐさをする必要はありません。相づちに合わせてムリにカラダを動かそうと意識すると、どうしても不自然になってしまいます。
意識することなく、自然は動きをするだけでいいのです。自分の体が勝手に反応してしまった、その程度でいいと思います。
相手の気持ちをくみ取り、トーンを合わせる。たったそれだけでも、ぐっと話しやすくなるはずです。
相づちにも表情を持たせていますか?
2. リズムを合わせることで話しやすい空気ができる

相づちで相手のトーンに合わせることと同時に意識しなければならないのが、リズムです。リズムが合えば、相手はあなたを自分と「同じ人」と感じてくれるのです。
無意識のうちにあなたを共通点がある人だとみなし、この人には私の話をしていいんだなという安心感が生まれます。そうすると、相手は心を開きやすくなるのです。
反対に、リズムがずれると、相手は自分と「違う人」とみなすのです。自分のことを話していい相手と認めないため、会話は成立しません。
無口なのになぜか話しやすく、会話上手だと思われる人は、このリズムを合わせるのがうまいのです。
あるとき、相づちがとてつもなく下手な人と話す機会がありました。その人は、ぼくが何か話す前に「へえ」と言うのです。
顔を見ると、どうやらふざけているわけではなさそうです。しばらく会話をしてわかったのは、その人が相づちを打とうとしているわけではなく、ただ単に癖で相づちが出てしまっているようなのです。
最も効果的なのは、たとえるなら、息つぎのタイミングです。相手の言葉が言わる瞬間です。終わって間があいてしまうのも、相手の話に重なってしまうのも適切とは言えません。
3. 相づちのタイミング

次の例文を使って相づちのタイミングを考えてみましょう。
「大事なのは、沈黙を埋めることではなく、沈黙を気にしないで、会話がつづくことなんだよね」
事例①
「大事なのは【うん】、沈黙を埋めることではなく【うん】、沈黙を気にしないで【ええ】、会話がつづくことなんだよね【なるほど】」
事例②
「大事なのは、沈黙を埋めることではなく【うん】、沈黙を気にしないで、会話がつづくことなんだよね【なるほど】」
いかがですか?
事例①は、句読点ごとに相づちを打っています。文章として目で読んでいても、意味がぶつ切りになっていて、スムーズでない感じがします。
それに対して事例②では、相手のリズムやテンポに合わせて相づちを打っている感じです。
合わせるときには、声のトーンやリズムを「知る」のではなく「感じる」ことを大切にしてください。
相手はどんなスピードで話していますか?
相手はどのようなテンポで会話を進めていますか?
まずはそれを感じて、それに合わせることから始めましょう。
相手がゆったりとしたリズムで会話をしていたら、こちらもゆったりと相づちを打つのが基本です。相手の話しがテンポ良く進んでいたら、こちらも同じようにテンポ良く相づちを打つといいでしょう。
相手のリズムを感じていますか?