
10日間の北欧の旅から、パリの家に帰ってきました。
玄関を入ってすぐ、スーツケースを開けてお土産を取り出そうとしながら、ぼくはもうラジオの録音を始めていた。「今帰ってきて、すぐラジオ?」と、妻はずいぶん驚いている。
でも、この驚いた顔ごと、記録しておきたかったのです。
夫婦が10日間も離れて過ごすのは、結婚してから初めてのこと。
だからこのお土産には、ぼくなりの理由がぜんぶ詰まっています。
出典:ポッドキャスト「ライフトラベラーカフェ」
cafe.248 北欧のお土産
▶ エピソード全文・音声はこちら → Listenで聴く
1. フクロウと月と星の、しおり
紙袋から、ひとつずつ取り出していく。
最初に出てきたのは、旅の最後に立ち寄った小さな島の文房具屋で見つけた、マグネットのしおり。
袋を開けた妻の顔が、ぱっと明るくなる。フクロウがいて、月と星がある。妻が好きなものが、この小さな一枚に全部そろっているのだから、無理もない。
お店でこれを見つけたとき、ぼくは迷わなかった。誰かの好きなものを知っているというのは、こういうときに効いてくる。「本のしおりだけど、ノートに使おうかな」と妻が言うのを聞きながら、選んでよかったと思う。
見た瞬間に「この人のもの」と分かる組み合わせは、なんですか?
2. 写真にしか見えない、森の絵
次に出てきたのは、ストックホルムで買ってきた絵はがき。北のほうの森を描いたものです。
「え、これ写真じゃないの?」と妻が聞く。ぼくも最初はそう思った。近づいて見ても、絵だとは信じがたいくらいの精密さで、森の湿った空気まで伝わってくる。
この絵に出会ったのは、地元のアーティストの作品を集めた小さなお店。展示はぼくが訪れる前日に始まったばかりで、原画も売られていたけれど、旅の途中で持ち歩くことを考えて、はがきを選んだ。
妻が少し前に「森を感じたい」と言っていたことが、頭のどこかに残っていたのだと思う。
もう1枚は、そのお店のオーナー自身の作品。オーナーもアーティストで、自分のギャラリーを持ちたくてこのお店を開いたのだと話してくれた。「ストックホルムには何日いるの?」と聞かれて「1日だけ」と答えると、心から驚いた顔をされた。観光客がわざわざこんなところまで来るのか、と。
でも、そういう場所にこそ、覚えていた誰かの言葉に応えてくれるものが置いてある。
誰かが「感じたい」と口にしたことを、あなたは覚えていますか?
3. 両手で抱えられる、フクロウの小皿

3つ目は、小皿です。
フクロウの赤ちゃんが、両手に抱えられるくらいの大きさで、まん丸の目でこちらを向いている。背景は、妻の好きなブルー。
妻は手のひらにのせて、しばらく眺めていた。
「アクセサリーを置くのにちょうどいい」と言って、割れないように袋に入れて持ち歩くのだそう。そして、こんなにフクロウのものがある国なら自分も行ってしまおうかな、とまで言い出した。
お土産が、次の旅の種になる。渡した側としては、これ以上の反応はありません。
あなたの好きなものが、たくさんある場所はどこですか?
4. 生キャラメル専門店のチョコレート
最後は、旅の途中のビデオ通話でも見せていたもの。ストックホルムにある、生キャラメル専門のお菓子屋さんのチョコレートです。
キャラメルだけでも驚くほどの種類があって、ぼくはひとつずつ試食して、いちばん美味しいと思ったものを選んだ。アーモンド入りのキャラメルを、ダークチョコレートで包んだもの。三角形のかけらが、いろんな形で袋に入っている。
妻はその場で袋を開けて、ひとつ口に入れた。「うまい」と、ひとこと。
チョコレートというより、ほぼキャラメル。コーティングの中に、キャラメルとナッツが詰まっている。
手をチョコレートだらけにしながら、ティッシュを取りに行き、「大事にいただきます」と妻は言う。ぼくはそのお店で生キャラメルのソフトクリームを食べてきた、と話したら、それはそれでうらやましがられました。
誰かのために選んだものを、最近いつ渡しましたか?
5. 好きなものが揃うと、自分の世界ができる
そんなお土産披露の会でした。
「好きそうなものを買ってきたでしょ」と言ったら、好きそう、ではなく全部好き、と妻。
そして何より、元気に帰ってきてくれたことがひと安心だった、と。
この10日間、毎日泣いていたらしい。というのは冗談だけれど、午前中は会議が続いて人と話していたし、ぼくとも電話をしていた。それでも、やっぱり違ったのだそうです。
ぼくにとっても、同じでした。
いま妻は、テーブルにお土産を並べている。フクロウと、月と、星と、夜空と、森と、木と、チョコレート。まるで小さな祭壇のように、妻の世界がそこにできあがっていく。
どこにいても、好きなものが揃うと、自分の世界は作れる。
北欧で買い集めたものを並べる妻を見ていて、そのことを教えてもらった気がしています。
あなたの世界を作るのに、欠かせないものはなんですか?